慶應義塾大学三田メディアセンター

貴重書展示会「究極の質感(マテリアリティ)」(会場:丸善丸の内本店4階ギャラリー)

過去の展示会と図録の一覧は「慶應義塾図書館貴重書展示会図録」 をご覧ください。


第31回慶應義塾図書館貴重書展示会
「究極の質感(マテリアリティ)-西洋中世写本の輝き-」

会期:2019年10月2日(水)~10月8日(火)  
会場:丸善・丸の内本店4階ギャラリー 
9:00~21:00 最終日16:00閉場 入場無料
主催:慶應義塾図書館  協賛:丸善雄松堂株式会社

西洋の書物は、グーテンベルク以前の中世において既にひとつの完成に達していました。
羊皮紙に羽ペンで写字され、さまざまな顔料や金で彩飾された写本は、美しくも実用的な書物文化を作り上げています。
手書き写本ならではの質感をお楽しみください。


ギャラリートーク

10月4日(金)18時~
10月6日(日)15時~
 慶應義塾大学文学部教授 松田 隆美  

講演会

10月5日(土)13時~
「中世の紙『羊皮紙』のおはなし」
 羊皮紙工房主宰 八木 健治

10月6日(日)13時~
「西洋中世写本彩飾のマテリアリティ:彩飾の語る写本の“ヒストリー“」 
 実践女子大学美学美術史学科教授 駒田 亜紀子

ワークショップ

10月5日(土)15時~ (先着順、当日12時よりギャラリーにて整理券を配布)
「羊皮紙に羽ペンで書いてみよう」 
 羊皮紙工房主宰 八木 健治

主な展示資料

【展示番号16】
ラテン語聖書
フランス、13世紀中葉)羊皮紙零葉



《本文と対応する物語イニシャル》
旧約聖書続編『マカバイ記1』(序– 2:44)の零葉。『マカバイ記1』の冒頭は、11行分の高さの物語イニシャル ‘C’で始まっていて、文字の中に槍を持って突撃する、甲冑に身を固めた中世の騎士の姿が描かれている。この挿絵は、ユダヤの独立戦争を指揮した紀元前2世紀の英雄で、中世では、騎士道精神を完璧に体現した「九偉人」 (Nine Worthies)のひとりに数えられていたユダ・マカバイの姿を描いたもので、物語中の描写に対応していると思われる。こうした物語イニシャルは本文への視覚的導入の役割を果たしていると言える。


【展示番号54】
ラテン語時禱書
(南ネーデルランド、15世紀中期) 羊皮紙 Ff. iii + 81 + iii.
 


《エリザベス1世の侍女が所有していた時禱書》
本写本は「フィトン時禱書」として知られ、15世紀中頃に南ネーデルランド地方(おそらくブルージュ)で制作された。15世紀から16世紀初期のネーデルランドでは、時禱書をはじめとする彩飾写本が盛んに制作され、それらは外国にも輸出されていた。本写本の典礼方式はイングランドの教会で広く採用されていたソールズベリ式で、このことから、この写本がイングランドに輸出されるべく制作されたことがわかる。本書には、エリザベス1世に侍従・侍女として仕えていた3名の人物の署名が、合計4カ所に見いだされる。所有者の変遷が推察され、興味深い。


【展示番号66】
アウグスティヌス『主と使徒の言葉』
(イングランド、12世紀)写本断片  Ff. 32.


《中世の装丁を保っているアウグスティヌスの説教集》
『主と使徒の言葉』は7世紀後半に北イタリアで編纂されたアウグスティヌスの説教集で、本写本は後期のロマネスク体で書かれたものである。現在では後半に属する32葉しか残っておらず、表表紙が外れて装丁がむき出しになっている。装丁は中世のもので、ヨークシャーのファウンテンズのシトー会修道院で制作された写本に類例が見られる。句読法もシトー会の写本の典型で、この大型の写本が公衆への朗読に使用されたことを示している。


【展示番号80】
ホプトン・ホール写本(中英語宗教文学アンソロジー)
(ノーフォーク、15世紀前半)羊皮紙 Ff. 43.



《未刊行散文作品を含む貴重な中英語写本》
「ホプトン・ホール写本」として知られるこの写本は、中英語で書かれた宗教散文および韻文のアンソロジーである。名称の由来は、本写本が1986年まで長らくイングランドのダービー州南部に位置する、Gell一族の住居であったホプトン・ホールに所蔵されていたためである。この写本は『平信徒のための教理問答』(Lay Folk’s Catechism)や『精霊の修道院の憲章』(The Charter of the Abbey of the Holy Ghost)などで構成され、全体を通じて、聖書や教父からの引用や抜粋が多く認められる。このように全編が英語の写本が市場に現れることは現在では極めて珍しい。


【展示番号91】
キケロ『善と悪の究極について』
(フィレンツェ、 1450–60年頃)羊皮紙 Ff. 97.
 


《ジョルジョ・アントニオ・ヴェスプッチ旧蔵のキケロ写本》
本書はキケロ(106 – 43 B.C.)の最晩年の哲学的対話篇で、倫理学の原理を扱った『善と悪の究極について』の写本である。巻頭ページの装飾は15世紀後半にフィレンツェで活躍し、メディチ家のために多くの写本装飾を手がけたフランチェスコ・ダントニオ・デル・ケリコ(Francesco d’Antonio del Cherico)の様式で、本文の余白には15世紀を代表するヒューマニストのジョルジョ・アントニオ・ヴェスプッチ (Giorgio Antonio Vespucci; c. 1434–1514)による自筆の書き込みが見られ、イタリア・ルネサンスの古典研究の姿を伝える一級資料といえる。

 

過去の貴重書展示会

第24回 ルカ・パチョーリの『スムマ』から福澤へ-複式簿記の伝播と会計の進化
第25回 『百科全書』 情報の玉手箱をひもとく~ドニ・ディドロ生誕300年記念~
第26回 慶應義塾の王朝物語:源氏物語を中心として
第27回 活字文化の真髄-日本の古活字版と西洋の初期印刷本-
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第29回 古文書コレクションの源流探検—反町十郎、反町茂雄、木島誠三、木島櫻谷、そして・・・
第30回 インキュナブラの時代-慶應義塾の西洋初期印刷本コレクションとその広がり-


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